虚血性疾患について (佐藤)

私佐藤誠は、中期専門研修として、心臓CT・心臓 血管内超音波(IVUS)といった循環器イメージング領域の日本第一人者である角辻暁 (すみつじさとる) 医師 (現 大阪大学大学院医学系研究科 先進心血管治療学 准教授)のもとで、「冠動脈インターベンション」と64列マルチスライスCT(MSCT) を研修してまいりました。

当科では、急性冠症候群をのぞく虚血性心疾患に対するカテーテル治療として、許す限りほぼ全例に薬剤ステントを使用します。この薬剤ステントを使用する ことにより、治療に伴うトラブルを減少させより安全に、また慢性期の再狭窄・再治療率もかなり減少させることができました。安全になったと言うのは、良好 な長期成績が期待できるため、治療時に「ドリルやカンナでけずる治療」や血管の太さ「ギリギリまで風船で拡げる」ような危険を伴う治療が少くなったためで す。常に、より安全な治療を目指しています。

また当科では、緊急症例や腎機能不良などで造影剤使用を控えたい症例をのぞくなるべく全例に、前もって心臓CTを施行し、血管の硬さの程度・プラークの 量やもろさ・枝分かれの状態など、治療に伴う危険がどの程度あるのか前もって評価を行い、より安全な治療を心がけております。また治療中にも、許す限りほ ぼ全例に血管内超音波IVUSを使用し、血管造影だけでは見逃す可能性のあるトラブルを回避しつつ、ミリ単位の設計図を元に冠動脈を安全確実に治療してい ます。常に、より効果的な治療を目指しています。

更に当科では、ほとんどのカテーテル治療は右手首の動脈から行っており (腎不全の患者様、慢性完全閉塞病変の治療の患者様、バイパス後で手首の血管がない患者様は例外です)、直後から歩行可能です。やむを得ず、足の付け根か らの治療になる方にも、止血用の特殊器具を使用することによって4時間後には歩いていただけるように、なるべく安静の必要のない治療を目指しています。常 に、優しい治療を目指しています。

カテーテル治療はほとんどの方が2泊3日となっております。治療を受けられる患者様は、前もって外来で受けら れたCTの結果から、「どの血管がどんな風に悪いのか」が はっきりしていますので、初回のカテーテル検査日にそのままカテーテル治 療を受けていただく事も可能です。 いくら安全で低侵襲とはいえ、動脈から心臓まで管を入れる必要のあるカテーテルは2回より1回、なるべく少ない回数の方が良いだろうと考えます。

2006年度 PCI in 名古屋徳洲会総合病院

総症例 367 cases (April’06-March’07)
ステント留置 すべてCypherステント
手首からの治療 >85% (腎不全とCTOをのぞく全例)
IVUS使用 >95%
前もってのCT施行 >70% (腎不全とACSをのぞくほぼ全例)
PCI に関連した合併症
PCI死亡 0 case (AMI死亡を含まない)
緊急バイパス 0 case
脳梗塞 1 case (後遺症なし)
心タンポナーデ 1 case (後遺症なし)
急性・亜急性ステント閉塞 1 case (後遺症なし・CK上昇なし)
Q波心筋梗塞 2 cases (slow flow現象など)
穿刺部出血 2 cases (外科的止血)
消化管出血 1 case (術後ストレス胃潰瘍にて輸血)
急性腎不全 1 case (コレステロール結晶塞栓)

同様の手法を用いて、前任地であった名古屋徳洲会総合病院ハートセンターでは、ほとんどの冠動脈インターベンションの執刀を担当しておりましたが、ごらんの通りの良好な初期成績を得ることができました。当院での実績は、全くこれからになりますが、「より安全で、より効果的で、より優しい」治療を行っていくことを、お約束します。