慢性腎臓病と腎生検

慢性腎臓病と腎生検

慢性腎臓病(CKD)

腎臓病の中で最も多くの方が該当する病気、それは「慢性腎臓病」です(CKDと略します)。ここ数年、TV等でも目にすることが増えた病名です。でも、CKDって一体何なのでしょうか…? まず知っていただきたいのは、この10年でCKDという新しい病気が発見されたわけでも、この病気の患者数が爆発的に増えたわけでもないということです。ではなぜ、あえてCKDという病名をつけ、広げるキャンペーンを日本腎臓学会は行ってきたのでしょうか。それは、腎臓病の自覚症状のなさ、ある程度悪くなってしまったら元には戻せない(不可逆性)、さらに悪くなってしまったら進行を遅らせることもできない…、このような特徴によるところが大きいです。腎機能の指標として、一般的には採血項目の血清クレアチニン(Cre)、尿素窒素(BUN)などが参考にされます。しかし、採血で基準値を超えて腎機能が低下しているとわかるのは実は腎機能が同世代の健常人の2/3~半分程度に低下してからです。自覚症状が出るのはさらに腎機能が悪化してからですから、具合が悪くなり、採血をして著しい腎機能障害に気付かれ腎臓内科や泌尿器科を紹介受診してもそれは手遅れであることがほとんどです。私自身、幾度となくこのような患者さんを前にして悲しい思いをしてきましたし、患者さんやご家族はそれ以上に悲しい思いをしたことでしょう。ではどうすればこのような事態を防げるのでしょうか? ここでCKDの登場です。腎臓内科医以外の先生方はもちろん、患者さん自身も自分が腎臓病であることを認識し、気軽に腎臓内科へ相談してみようと思えるように専門家が知恵を絞った結果がCKDです。CKDの定義を確認してみましょう。

「①尿異常、画像、血液、病理で腎障害の存在が明らか。特に蛋白尿の存在が重要。②糸球体濾過量(GFR)が <60mL/min/1.73m2。①②のいずれかまたは両方が3ヶ月以上持続する。」

どうですか?例えば①.去年今年と職場の健診で尿蛋白が陽性だったあなた。CKDです。②はこれだけ見ると何のことやらわかりません。が、採血で血清Cre値が男性で1.1 mg/dl以上、女性で0.9 mg/dl以上なら中年以降はほぼ該当します。その原因が高血圧だろうが糖尿病だろうが腎炎だろうが原因不明だろうが何でもいいんです。そして、CKD診療ガイドラインには腎臓内科へ相談するべきタイミングについても明確に記載されています。

「①高度の蛋白尿(推定で0.5g/日以上もしくは2+以上)②蛋白尿と血尿が共に陽性③GFR 50 mL/min/1.73m2未満(中年男性だとCre 1.3 mg/dl以上, 中年女性だと1.0 mg/dl以上に相当します)。①~③のいずれか1つでも該当する患者。」

やや一般の方には専門的になってしまいましたがこのように記載されています。CKDの定義と合わせ、注目すべきは尿蛋白の重要性です。腎臓が悪くなる方の大部分は、採血異常が出る前に尿検査異常が認められます。つまるところ腎臓内科医からCKDに込められたメッセージというのは、『採血で腎機能が正常でも、持病が何でも、尿検査異常があったら1回相談して下さい』、ということに尽きると思います。「こんなことで受診していいのかな…?」「こんなことで紹介していいのかな…?」←「いや、是非してください。早期発見早期治療が重要ですよ。」 ・・・これがCKDの正体です。
CKDは腎臓内科医向けに作られた病名ではなく、腎臓内科医以外・患者さん向けに作られた言葉です。そこには『採血で腎機能が悪くなる前に、尿検査異常で気軽に相談しましょう。持病や原因は問いません。』というメッセージが込められています。

腎生検

腎臓病は採血や尿検査で現在の腎臓の機能を推定することができます。しかし、腎病変の種類、重症度や予後を知るためには腎臓の組織を採取し評価することが必要です。その方法として腎生検があります。症状によってはそのまま入院治療に移行することもありますが、検査だけであれば1週間弱の入院で行います。組織を見ることで最も効果的で、かつ副作用のリスクを抑えた最適な治療法を選択することができるようになります。