整形外科の研修目標

日常診療において、整形外科的疾患の基本的な鑑別診断および整形外科的処置の技術を習得する。

1)問診および診察法

  • 病歴を正確にとり、記録できる。
  • 主訴、主症状から疑うべきいくつかの疾患を列挙できる。
  • 基本的な整形外科的診察法(神経学的所見、関節可動域測定、徒手筋力検査)が、正確かつ要領よく行える。

2)基本的臨床検査法

  • 血液(血算、出血凝固系、ガス分析、培養)、血清(生化学、免疫学的検査)、尿(一般、顕微鏡的検査)、便(潜血反応)、髄液、細菌培養などの検査法の選択、結果を理解でき、緊急検査を実施できる。

3)画像診断法

  • 基本的なX線検査法を指示し、それを読影し、正確な診断ができる。
  • 脊髄造影や関節造影を指示または施行し、それを読影し、正確な診断ができる。
  • 血管造影の結果を分析できる。
  • CT、MRIを指示し、その結果を分析できる。
  • 基本的な核医学検査法を指示し、その結果を分析できる。

4)滅菌消毒法

  • 滅菌ならびに消毒についての基本的な知識を得る。
  • 手術の際の手洗いや手術着、手袋の着用が適切にできる。
  • 手術、観血的検査、創傷処置などの際に無菌的処置を行える。

5)採血法

  • 臨床検査や輸血のための採血(静脈血、動脈血)を行える。

6)注射法

  • 皮内、皮下、筋肉内、静脈、動脈、関節内、硬膜外等、各注射法の適応、禁忌、副作用などについての知識と、正しい注射法の技術を身につける。

7)輸液、輸血法

  • 水分電解質代謝の基本的理論、輸液の種類と適応についての知識を身につけ、適切な輸液ができる。
  • 輸血の種類と適応についての知識を身につけ、適切な輸血ができる。
  • 輸血による副作用と事故についての知識を身につけ、その予防、診断、治療法を実施できる。

8)穿刺法

  • 腰椎、各関節の穿刺法の目的、適応、禁忌、実施方法、使用器具、実施上の注意点などの知識を身につけ、実施できる。

9)処方

  • 一般的な薬剤についての適応、禁忌、使用量、副作用などの知識と処方の方法を身につける。
  • 麻薬の取扱い上の注意と副作用などの知識を身につけ、正しく処方できる。

10)創傷の処置

  • 創傷に対する消毒、局所浸潤麻酔、洗浄、デブリードマン、止血、縫合などの局所的療法が適切に行える。
  • 創傷の全身的影響について理解し、全身的療法(輸液、輸血、抗生剤投与、免疫療法など)が適切に行える。
  • 血管、神経、腱、筋肉、骨などの深部組織の損傷の診断と緊急手術の必要性の判断ができる。

11)外傷(骨折、脱臼、捻挫)の救急

  • 適切なX線検査の指示を出し、正確に診断できる。
  • 開放性骨折の有無を診断し、適切な処置ができる。
  • 起こり得る合併症についての知識とその予防、治療法を身につける。
  • 各関節の脱臼徒手整復の知識と技術を身につける。
  • 適切な外固定を行える。
  • 緊急手術の必要性の判断ができる。

12)包帯、副木、ギプス固定法

  • 主な包帯法の種類と適応を理解し、実施できる。
  • 骨折の際の応急の副木法を実施できる。
  • 基本的なギプス固定法を実施できる。

13)基本的な整形外科疾患の理解

  • 感染症-骨髄炎、化膿性関節炎、骨結核
  • RAと類縁疾患-RA、JRA、強直性脊椎炎
  • 慢性関節疾患-変形性関節症、痛風、偽痛風
  • 骨の阻血壊死性疾患-骨端症、離断性骨軟骨炎、突発性骨壊死
  • 先天性骨系統疾患および奇形症候群
  • 代謝性骨疾患
  • 骨腫瘍、軟部腫瘍-良性腫瘍、悪性腫瘍
  • 筋原性疾患、麻痺性疾患
  • 各部位別疾患
    • 肩(肩関節周囲炎、腱板断裂、反復性脱臼)
    • 肘(肘内障、外上顆炎、肘関節遊離体、離断性軟骨炎)
    • 手(先天異常、腱断裂、抹消神経麻痺、ばね指、腱鞘炎)
    • 頸椎(斜頸、頸部椎間板ヘルニア、頸部脊髄症、脊髄腫瘍)
    • 胸腰椎(側弯症、腰痛とその起因疾患、化膿性脊椎炎、脊椎腫瘍)
    • 股(先天性股関節脱臼、変形性股関節症、ペルテス病、
    • 大腿骨頭壊死、大腿骨頭すべり症)
    • 膝(変形性膝関節症、靱帯損傷、半月板損傷)
    • (先天性内外足、外反母趾、アキレス腱断裂)

14)術前・術後管理

  • 術前に必要な検査を適切に指示し、その結果を判断できる。
  • 術前患者の手術の適応や手術法について要領よく説明できる。

方略

・主に入院患者を数名担当し、上級医、指導医とともに周術期管理を学ぶ。

・上級医の指導の下、外来診療を学ぶ。

・上級医の指導の下、救急外傷への適切な対応を学ぶ。

・上級医、指導医とともに手術に入り、基本的手術手技を学ぶ。

・総回診前、ケースカンファランスで症例提示を行いプレゼンテーション能力を磨く。

・回診・カンファランスに参加し、発表、討論を行う。

・週間スケジュールは「初期臨床研修に関する規程」を参照

評価

① 研修医の評価:終了時に評価票に従って自己評価と指導医による評価(3段階)、コメディカルによる評価(5段階)を行なう。また、EPOC(オンライン臨床研修評価システム)に自己評価と指導医評価を入力する。

② 指導医評価:研修医による評価(3段階)を行なう。

③ 研修プログラムの評価:研修医や指導医の意見を聞き、研修プログラムの検討を行なう。

 

目次

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(放射線科の研修目標)

基本的研修目標と科別研修目標について