■ リウマチ膠原病専門外来の対象患者さん

  • 複数の関節が痛い,腫れている
  • 関節リウマチ
  • リウマチ疾患:乾癬性関節炎,リウマチ性多発筋痛症など
  • 全身性エリテマトーデス
  • 全身性強皮症
  • 多発性筋炎・皮膚筋炎
  • シェーグレン症候群
  • 血管炎症候群

 

■ 関節の腫れや痛みが続く方へ

 関節が腫れて痛いことを「関節炎」と言います。関節炎は,関節リウマチなどのリウマチ疾患でも起こりますが,他に外傷(ケガ)や感染症によっても起こります。関節リウマチは,複数(3箇所以上)の関節が3ヶ月以上にわたって腫れて痛むのが特徴です。そのような方はリウマチ科の受診をご検討ください。

 一方で,1箇所の関節が痛い(腫れている)とか,関節炎の発症から1週間程度ですと,関節リウマチではない可能性が高いです。この場合には,整形外科の受診をお勧めいたします。

 

関節リウマチの症状

関節リウマチらしくない症状

痛い関節が腫れているか

腫れている

腫れていない

腫れている関節の数

3箇所以上

1~2箇所

発症からの期間

3ヶ月以上

少なくとも6週間つづく

3週間未満

腫れている関節の場所

指,手首など小さい関節

膝,肩など大きな関節

腫れた関節が赤くなっているか

赤くなっていない

赤い場合には痛風や,感染症を先に考えます

 

■ 関節リウマチ:RA (Rheumatoid arthritis)

どんな病気か:複数の関節に炎症が続き,軟骨や骨が破壊され,やがて関節の変形をきたす病気です。関節が腫れて,時に激しい痛みに苛まれます。炎症は,関節の滑膜に起こります。関節のみの病気と思われがちですが,肺や心臓,腎臓などにも影響が現れることがあります。特に肺は,軽い所見を含めると,リウマチ患者の4人にひとりはリウマチ肺が見つかると言われています。

症状:朝のこわばり,3箇所以上の関節がずっと腫れて痛いのが主です。患者さんによっては発熱や倦怠感,食欲不振を伴います。

病気の原因:免疫の異常によって起こりますが,その原因は十分に解明されていません。近年では,タバコや歯周病,腸内細菌の異常によって免疫が狂うことが明らかになっています。

診断に必要な検査:血液検査,エックス線検査を行います。炎症の強さや初期の病変を調べるために,関節超音波検査や関節MRI検査を行うこともあります。

治療:メトトレキサート(MTX)の内服治療が基本となります。他にも内服する抗リウマチ薬があります。内服治療で効果が十分でない場合には,生物学的製剤(注射)やJAK阻害薬(内服)を併用しています。

患者さんへお勧めしたいこと:関節リウマチはタバコ,歯周病,慢性副鼻腔炎(いわゆる「蓄膿症」),慢性便秘などで悪化することが分かってきました。患者さんには,禁煙,適切な歯科治療などにご協力いただきたいです。その方が,薬の効きが良くなり医療費も安く済むはずです。

 

新しい治療:

(1) トファシチニブ(薬品名:ゼルヤンツ) JAK阻害薬として2013年に認可された内服薬です。これまでの生物学的製剤とほぼ同等の効果が証明されています。生物学的製剤よりも痛みや倦怠感などの症状改善には優れているという説があります。利点は,内服であることと効果が強いので他の内服薬を減らせる可能性があることです。欠点は,薬価が高く生物学的製剤と同等であることと,日本人を含むアジア人では帯状疱疹の発生率が高いこと(約8パーセント)です。他の副作用は他の生物学的製剤と同等です。

(2) バリシチニブ(薬品名:オルミエント)  JAK阻害薬として2017年に認可された内服薬です。これまでの生物学的製剤とほぼ同等の効果が証明されています。生物学的製剤よりも痛みや倦怠感などの症状改善には優れているという説があります。利点は,内服であることと効果が強いので他の内服薬を減らせる可能性があることです。欠点は,薬価が高く生物学的製剤と同等であることと,日本人を含むアジア人では帯状疱疹の発生率が高いこと(約8パーセント)です。なお,腎機能が高度に低下した患者さんには処方できません。他の副作用は他の生物学的製剤と同等です。

(3) サリルマブ(薬品名:ケブザラ) 日本で2017年に認可された生物学的製剤です。IL-6受容体を阻害します。2週に1回皮下注射(自己注射)します。

 

■ 関節リウマチの薬物治療

関節リウマチの患者さんに処方する薬は様々なものがあります。しかしながら,どの薬にも利点と欠点があります。これらを熟知して,個々の患者さんの状態に合わせて処方するのがリウマチ専門医です。

(1)  消炎鎮痛薬(NSAIDs):いわゆる「痛み止め」です。これらの薬により,関節痛は軽減します。一方で,関節破壊を抑える効果はありません。副作用には,胃潰瘍や十二指腸潰瘍,あるいは腎障害があります。

どんな薬があるか:ロキソニン,ハイペン,モービック,ボルタレン,ロルカム,など

(2) 副腎皮質ステロイド:副腎でつくられるホルモンです。鎮痛効果,消炎効果,免疫抑制効果があります。この薬により,関節痛は軽減し,関節の腫れは改善します。しかしながら,関節破壊を抑える効果はないとされています。また,長期の服用により様々な副作用があります。かつては関節リウマチ治療の主役でしたが,現在では「できるだけ少ない量で,できるだけ短期間」使う薬という位置づけです。

どんな薬があるか:プレドニゾロン,プレドニン,メドロール,など

ステロイドの副作用の一部:胃潰瘍,十二指腸潰瘍,高血圧,高血糖(ステロイド性糖尿病),骨粗鬆症,満月様顔貌,中心性肥満,挫創,神経精神障害,日和見感染症

(3) 抗リウマチ薬:これらの薬は関節リウマチ治療の主役です。この薬により,関節の炎症が抑えられ,関節破壊が抑制されます。(1), (2)は症状を抑える薬ですが,抗リウマチ薬は病状を抑える薬です。原則として全ての関節リウマチ患者さんにお勧めする薬です。しかし,以下の特徴があります。直接的な鎮痛効果はなく関節痛はすぐには取れないこと,効きはじめるまで数週間かかること,効き方に個人差があってよく効く患者もいれば全く効かない患者もいること,そして独特の副作用があることです。

どんな薬があるか:メトトレキサート(リウマトレックス,メトレート),リマチル,アザルフィジン,プログラフ,ケアラム,など

(4) メトトレキサート(MTX):抗リウマチ薬の中でも特に使用頻度が高いのがメトトレキサートです。世界のリウマチ患者の60~80パーセントがこの薬を服用しています。関節リウマチの基本薬です。この薬を服用すると,徐々に関節の腫れが改善し,その結果として痛みも軽減します。そして,この薬には関節破壊を抑制する効果があります。つまり,「変形を抑える薬」です。しかしながら,副作用もあるため注意して処方しています。主な副作用は以下の通りです。

a. 薬の量を増やせば起こりやすくなる副作用(用量依存性の副作用):貧血,肝機能障害,口内炎,嘔気,など

b. 薬と患者さんとの相性で起こる副作用(用量非依存性の副作用):発疹,間質性肺炎,リンパ腫,など

(5) 生物学的製剤:関節リウマチの炎症の「火種」である炎症性サイトカイン(TNFαやIL-6など)を抑える薬です。すべて注射(点滴静注または皮下注射)です。メトトレキサートとの併用により,強力に関節破壊を抑制し,関節痛症状も改善します。生物学的製剤は,メトトレキサート治療でも十分な効果が得られなかった患者さんにお勧めしています。強力なのですが,薬剤費も高価です。患者さんと治療効果,医療費について,十分に相談して開始いたします。生物学的製剤は開始前に感染症等のリスクが高くないか事前の検査が必要です。

どんな薬があるか:レミケード,エンブレル,アクテムラ,ヒュミラ,オレンシア,シンポニー,シムジア,ケブザラ

(6) JAK阻害薬:生物学的製剤とほぼ同等の効果を有する内服薬です。位置づけは,生物学的製剤と同じです。メトトレキサート治療でも十分な効果が得られなかった患者さんや,生物学的製剤治療でも十分な効果が得られなかった患者さんにお勧めしています。日本人は,帯状疱疹が出やすい(8パーセント程度)ので,内服治療中は注意しています。

どんな薬があるか:ゼルヤンツ,オルミエント

 

■ 乾癬性関節炎:PsA (Psoriatic arthritis)

どんな病気か:尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)という皮膚病に伴って起こる関節炎です。尋常性乾癬の患者さんの一部に発症しますが,皮膚症状が落ち着いていても起こることがありますし,皮膚症状が全くなくても関節症状だけが起こることがあります。

症状:関節の腫れや痛みが1~5箇所くらいに起こります。起こりやすい関節は,手指のDIP関節(指先の関節)です。関節以外に,爪の異常,アキレス腱の腫れ,動くと楽になる腰痛(炎症性腰痛といいます),指の腫れ(指炎),メタボリック症候群を同時にもつ患者さんがいます。

診断に必要な検査:血液検査,エックス線検査を行います。炎症の強さや初期の病変を調べるために,関節超音波検査や関節MRI検査を行うこともあります。関節リウマチと似ているので,関節リウマチでないことを確認するためにも検査を行います。

治療:皮膚症状があれば皮膚科と連携して診療します。関節症状にはメトトレキサート(MTX)の内服治療を開始し,効果が十分でない場合には,生物学的製剤(注射)を併用しています。

新しい治療:

(1) セクキヌマブ(薬品名:コセンティクス) IL-17Aを抑える生物学的製剤です。尋常性乾癬の皮膚症状と関節症状を強力に抑えてくれます。

(2) イキセキズマブ(薬剤名:トルツ) IL-23を抑える生物学的製剤です。尋常性乾癬の皮膚症状と関節症状を強力に抑えてくれます。

 

■ リウマチ性多発筋痛症:PMR (Polymyalgia rheumatica)

どんな病気か:50歳以上に発症する病気です。くび,肩,腕,大腿部の筋肉痛が続きます。発熱や体重減少を伴うこともあります。生命に関わる病気ではありませんが,診断がつかず適切な治療がなされないと,何年にもわたってつらい症状が続きます。また,30%程度に巨細胞性動脈炎を合併します。巨細胞性動脈炎は難病のひとつで,こちらは適切な治療がなされないと失明したり,命に関わる可能性があります。なお,病名に「リウマチ性」とありますが,関節リウマチとは全く関係ない病気です。

症状:朝のこわばり,くび,肩,腕,大腿部の筋肉痛。発熱,体重減少。時に視力障害を伴うことがあります。視力障害を伴う場合,緊急性が高く早期の治療が必要です。

病気の原因:免疫の異常によって起こりますが,その原因は十分に解明されていません。

診断に必要な検査:この病気は診断の決め手とする検査はありません。しかし他の病気を否定するために,血液検査,エックス線検査,関節超音波検査や関節MRI検査を行うこともあります。

治療:副腎皮質ステロイドの内服を行います。

新しい治療:

(1) トシリズマブ(薬剤名:アクテムラ) 日本で開発されたIL-6に関係する生物学的製剤です。関節リウマチ,高安動脈炎,巨細胞性動脈炎に認可されています。この治療により,副腎皮質ステロイドを減らすことができるのが利点です。一方で薬剤費が高額のため,自己負担額が上がります。現時点で,リウマチ性多発筋痛症にトシリズマブは認可されておらず,臨床研究が進められています。

 

■ 全身性エリテマトーデス:SLE (Systemic lupus erythematosus)

どんな病気か:発熱,紅斑(顔面の蝶形紅斑や頬部紅斑,円盤状皮疹,凍瘡様皮疹など),関節炎,腎炎,血球減少,漿膜炎(胸膜炎や心膜炎),神経症状など全身に異常が現れる免疫の病気です。若い女性(15~40歳くらい)に起こりやすいですが,男性や高齢者でも起こることがあります。重症度が高い場合には,厚生労働省の定めた指定難病に該当します。

症状:発熱,体重減少,紅斑,関節痛・関節の腫れ,むくみ,貧血,胸部痛など多彩です。

病気の原因:免疫の異常によって起こりますが,その原因は十分に解明されていません。

診断に必要な検査:診断のために血液検査,尿検査を行います。炎症の強さや初期の病変を調べるために,腎生検,全身のCT, 心臓超音波検査を行うこともあります。外来診察で診断が確定した場合,全身の合併症を調べるために入院をお勧めすることが多いです。

治療:副腎皮質ステロイドとクロロキンによる治療を行いますが,病気の勢いや合併症(腎炎など)の状況によって,免疫抑制薬を併用することがあります。

新しい治療:

(1) ヒドロキシクロロキン(薬品名:プラケニル) ヒドロキシクロロキンはマラリアの薬として開発されましたが,SLE患者のだるさや関節症状を改善します。日本では2015年に認可されました。海外では,生涯継続するだけのメリットがあると言われています。大量に投与すると網膜障害が起こるため,年1回は眼科に診ていただくことが条件となっています(SLE患者に処方する量は少量なので,あまり心配のない量です)。

(2) ミコフェノール酸モフェチル(薬品名:セルセプト) 海外では広く使われていますが,日本では臓器移植専用の免疫抑制薬でした。日本では2015年からループス腎炎に認可されました。この薬を内服すると,抗DNA抗体などSLEの病気の原因である自己抗体が低下するのが最大の利点です。一方で,初期には下痢することがあるのと,奇形の原因となるため妊娠中は使えないことがポイントです。

(3) ベリムマブ(薬品名:ベンリスタ) 日本で2017年に認可された生物学的製剤です。週1回皮下注射(自己注射)します。この治療により,副腎皮質ステロイドを減らすことができます。大きな副作用はあまり報告されていません。ステロイドをなかなか減らせない患者さんに勧めています。

 

■ 全身性強皮症:SSc (Systemic sclerosis)

どんな病気か: 全身の皮膚が硬くなっていく膠原病です。皮膚の硬化のみならず,血のめぐりがとても悪くなり,指先が真っ白になる【レイノー現象】,食道から腸まで全ての消化管の動きが悪くなる【逆流性食道炎,偽性腸閉塞,など】,肺動脈が細くなる【肺動脈性肺高血圧症】,そして肺が硬くなる【肺線維症,間質性肺炎】を併発します 個人差がとてもある病気です。起こりやすい年齢は30~50歳の女性です。 重症度が高い場合には,厚生労働省の定めた指定難病に該当します。

症状:レイノー現象(指先が冷えると真っ白になり,なかなか赤みが差してこない),指先の皮膚がつっぱる,関節痛,咳や呼吸苦,倦怠感などなど多彩です。

病気の原因:免疫の異常によって起こりますが,その原因は十分に解明されていません。

診断に必要な検査:診断のために血液検査,尿検査を行います。炎症の強さや初期の病変を調べるために,腎生検,全身のCT, 心臓超音波検査を行うこともあります。外来診察で診断が確定した場合,全身の合併症を調べるために入院をお勧めすることが多いです。

治療:副腎皮質ステロイド,免疫抑制薬,血流改善剤などを併用します。肺高血圧症はたいへんな合併症で命に関わりますので,この場合には強力な血管拡張薬を3剤併用します。

新しい治療:

(1) トシリズマブ(薬品名:アクテムラ) 日本で開発されたIL-6受容体阻害薬です。関節リウマチや高安動脈炎,巨細胞性動脈炎の治療薬として認可されています。皮膚硬化の進行を抑える可能性があり,現在臨床研究が行われています。まだ全身性強皮症には認可されていませんが,期待されている治療です。

(2) ミコフェノール酸モフェチル(薬品名:セルセプト) 日本では臓器移植後とSLEの腎合併症に用いられます。全身性強皮症に効果があると言われており,現在臨床研究が進んでいます。まだ全身性強皮症には認可されていませんが,期待されている治療です。海外では広く使われていますが,日本では臓器移植専用の免疫抑制薬でした。日本では2015年からループス腎炎に認可されました。この薬を内服すると,抗DNA抗体などSLEの病気の原因である自己抗体が低下するのが最大の利点です。一方で,初期には下痢することがあるのと,奇形の原因となるため妊娠中は使えないことがポイントです。

 

■ 多発性筋炎・皮膚筋炎:PM/DM (Polymyositis / Dermatomyositis)

どんな病気か: 全身の筋肉に自己免疫的な炎症が起こる病気です。筋肉が主体のときには多発性筋炎,筋肉のみならず皮膚症状(【ヘリオトロープ疹】眼瞼の浮腫を伴う紅斑,【ゴットロン徴候】指の関節の落屑を伴う紅斑)もある場合には皮膚筋炎と言います。どちらも間質性肺炎を伴うことがあります。また,特に皮膚筋炎は悪性腫瘍にともなって起こることがあります。個人差がとてもある病気です。起こりやすい年齢は,10歳前後の小児と,50~60歳の女性です。 重症度が高い場合には,厚生労働省の定めた指定難病に該当します。

症状:レイノー現象(指先が冷えると真っ白になり,なかなか赤みが差してこない),発熱,筋肉痛(特に肩,腕,大腿部),関節痛,咳や呼吸苦,倦怠感などなど多彩です。

病気の原因:免疫の異常によって起こりますが,その原因は十分に解明されていません。一部は悪性腫瘍の患者さんに起こった免疫異常が原因となります。

診断に必要な検査:診断のために血液検査,MRI検査,筋生検,筋電図を行います。炎症の強さや初期の病変を調べるために,全身CT, 心臓超音波検査を行うこともあります。外来診察でこの病気が強く疑われた場合,診断確定のために入院をお勧めすることが多いです。

治療:副腎皮質ステロイド,免疫抑制薬,血流改善剤などを併用します。強力な治療が必要ですので,入院期間は1~2ヶ月程度が見込まれます。また退院後にも筋力の回復が不十分なことが多く自宅療養が必要です。

 

■ 特殊な皮膚筋炎

(1) 悪性腫瘍による皮膚筋炎:皮膚筋炎は悪性腫瘍に伴って発症することがあります。あらゆる種類の癌で起こりえます。もし,悪性腫瘍を合併した皮膚筋炎だった場合,基本的には悪性腫瘍の治療を優先します。悪性腫瘍の影響で免疫異常が起こっているからです。

(2) 無筋症性の皮膚筋炎:筋肉の症状がほとんどない皮膚筋炎では,急速に進行していく間質性肺炎を併発することがあります。これは命に関わる重篤な病気です。もし,無筋症性の皮膚筋炎と診断した場合には,強力な免疫抑制療法を早期から行わないと間に合いません。

 

■ シェーグレン症候群:SS (Sjogren syndrome)

どんな病気か: 眼と口が渇く病気です。ドライアイ,ドライマウスです。 発症しやすい年齢は,30~60歳の女性です。ドライアイ,ドライマウスはよくある症状ですので,気付かずにいる方も多いはずです。ほとんどは命に関わる疾患ではありませんが,リウマチのような関節症状や,稀に神経症状を伴う場合があります。 重症度が高い場合には,厚生労働省の定めた指定難病に該当します。

症状:眼が乾く(眼のゴロゴロ感など),口が渇く(ノドが渇くではなく口が渇くです),虫歯が多い(唾液が少ないからです),たまに関節痛。

病気の原因:免疫の異常によって起こりますが,その原因は十分に解明されていません。

診断に必要な検査:診断のために血液検査,眼科検査,耳鼻科検査が必要です。診断確定のために口唇生検することがあります。

治療:唾液分泌を促進する内服薬がありますが,根治的な治療は今のところありません。症状が軽い方は無治療で経過観察することが多いです。

新しい治療:

(1) アバタセプト(薬品名:オレンシア) 関節リウマチ用の生物学的製剤として認可されていますが,シェーグレン症候群に関わる免疫異常に効果があることが知られています。現在のところ臨床研究が進んでいます。

 

■ 血管炎症候群

どんな病気か:血管の壁に自己免疫による炎症が起こります。この炎症が続くと,血管が破れて出血したり,血管が詰まって臓器障害を起こすことがあります。また,炎症が続くので,多くの患者さんは発熱が続き,体重が減っていきます。血管炎症候群は,どこの血管に炎症が起こるかで分類します。 重症度が高い場合には,厚生労働省の定めた指定難病に該当します。

症状:発熱,倦怠感,体重減少,障害された血管によって様々な臓器に悪影響が出ます

病気の原因:免疫の異常によって起こりますが,その原因は十分に解明されていません。

診断に必要な検査:全身のCT, 障害された臓器の精密検査(腎生検など)

治療:副腎皮質ステロイドやシクロホスファミドなど強力な免疫抑制療法が必要になります。治療が遅れたり,不十分な治療では臓器障害が回復しません。

 

■ リウマチ科を受診する患者さんへ

  • 我々は,診療ガイドラインに沿った国内で標準的な治療を提供します
  • ガイドラインを超える治療が必要と判断した場合には,その旨を説明いたします
  • お願い:診療時間が5~10分程度に限られているため,診療科外の症状相談が主体の場合,当該疾患診療時間が短縮します

お願い:がん健診は皆さまが受けていただけますようお願いします

 

■ 関節リウマチの方にお勧めする生活習活習慣

関節リウマチの方にお勧めする生活習慣についてまとめています。

最終更新日:2019/03/28  文責:奥山 慎

 

■ タバコはやめましょう

 タバコは一見するとリウマチと関係なさそうに思えます。しかし,喫煙により,関節リウマチを発症させる免疫異常が肺に発生することが示されています。タバコは関節リウマチ発症の原因のひとつです。また,関節リウマチ患者さんはタバコで病状が悪化する可能性があります。

 関節リウマチの方はタバコはやめましょう。そして,関節リウマチになりたくない方もタバコはやめましょう。

 

■ 歯周病と慢性副鼻腔炎(蓄膿症)は治療しましょう

 歯周病は,関節リウマチを発病させる原因のひとつと考えられています。関節リウマチの患者さんは,歯周病によりリウマチ症状が悪化する可能性があります。同様に,慢性副鼻腔炎(蓄膿症)もリウマチ症状を悪化させる可能性があります。関節リウマチの患者さんには,定期的に歯科でチェックを受けること,鼻水がつづく場合には耳鼻咽喉科で診ていただくことをお勧めします。

 

■ がん検診は進んで受けましょう

 日本人の2人にひとりは癌になる時代です。そして,癌になるとリウマチ症状が悪化することがあります。リウマチ症状が悪化した場合,もしかすると癌があるかもしれない…ということです。

 では,関節症状が悪化するたびに,胃カメラを飲んで大腸カメラを行って腹部エコー検査を行ってCT検査も行って,女性なら乳癌や子宮癌をチェックし,男性なら前立腺癌をチェックするのでしょうか。無理ですよね。なお,「受けたい」と仰る患者さんがいたとしても,保険診療で全てを行うことはできません。

 ぜひとも定期的ながん検診(もちろん人間ドックもOKです)を受けてください。

 

■ よくある質問・リウマチ科

患者さんからのよくある質問をまとめています。

最終更新日:2019/04/03  文責:奥山 慎

 

質問:リウマチ因子(RF)が陽性でした。関節リウマチでしょうか?

回答:その結果だけでは,関節リウマチとは言えません。

解説:リウマチ因子(RF)が陽性の方は,「関節リウマチになりやすい体質である」と言えます。でも,関節リウマチを発症するかどうかは別問題です。「リウマチ因子が陽性ですが関節リウマチではない」人のほうが圧倒的に多いです。もし,朝のこわばりとか関節の腫れとか症状がある場合には受診をしてください。なお,リウマチ因子(RF)が陽性の方は,年齢とともに数値が増えます。「数年前よりリウマチ因子(RF)が高くなった」からと言って受診する必要はありません。

 

質問:抗核抗体(ANA)が陽性でした。膠原病でしょうか?

回答:その結果だけでは,関節リウマチとは言えません。

解説:抗核抗体(ANA)が陽性の方は,「膠原病になりやすい体質である」と言えます。でも,発症するかどうかは別問題です。「抗核抗体が陽性ですが膠原病ではない」人のほうが圧倒的に多いです。もし,微熱がつづく,関節が腫れている,体重が減ってきた,などの症状があれば受診してください。

 

質問:「膠原病」って何ですか?

回答:膠原病は,免疫が狂って,自分の免疫が自分自身を攻撃し,全身に症状がでる病気の総称です。「心臓病」には心筋梗塞や不整脈や心不全があり,「脳卒中」には脳出血,脳梗塞,くも膜下出血があるように,「膠原病」にも様々な疾患があります。

解説:「膠原病」という病気があるわけではありません。自分の免疫が,自分の身体の複数の部分を攻撃して具合が悪くなっていく病気がいくつかありますが,それらをまとめて「膠原病」と呼んでいます。主な膠原病には,全身性エリテマトーデス,全身性強皮症,多発性筋炎・皮膚筋炎,血管炎症候群,成人スチル病,ベーチェット病,リウマチ性多発筋痛症などがあります。関節リウマチを膠原病に含めることもありますが,関節リウマチはとても患者数が多いので,分けて考えることが多いです。なので「リウマチ・膠原病」などとまとめて呼んだりします。

 

質問:「リウマチ科」って何を診るんですか?

回答:関節リウマチ,膠原病の全般に対応いたします。痛風(高尿酸血症)にも対応いたします。

解説:リウマチ科は,関節リウマチなどのリウマチ疾患や膠原病の患者さん,あるいはこれらが疑われる患者さんの診療を行います。なお,我々は内科医です。手術は整形外科にお任せしておりますが,内科医の視点からリウマチ・膠原病患者さんに起こりうる様々な症状・所見(関節炎,発熱,貧血,腎障害,皮膚症状など)に対応いたします。

 

質問:関節リウマチで治療中ですが,妊娠できますか?

回答:大切なことが3つあります。病気の勢いが落ち着いていること(疾患活動性が低いこと),続けるべき薬と止めるべき薬を専門医と相談しておくこと,そして産科医との連携ができることです。

解説:関節リウマチの勢い(疾患活動性)が落ち着いていることは妊娠することの前提です。落ち着いていない状態では,受精しても着床しにくく妊娠が成立しにくいです。着床しても流産しやすいことが分かっています。最近では,落ち着いていない状態で妊娠した場合,生まれた子供のてんかんやアルツハイマー病のリスクが上がるという報告があります。次に薬です。関節リウマチの基本薬であるメトトレキサート(MTX)は妊娠前から止める必要があります。この他の薬は,関節リウマチの勢いを抑えるために必要不可欠なものは続けます(これはインフォームドコンセントに基づいて行います)。前述の通り,無理矢理に抗リウマチ薬を止めて,病気の勢いが上がってしまうと流産しやすくなってしまいます。患者さんに安心して妊娠していただくためにも,リウマチ専門医と産科医の連携が必要です。

 

質問:生物学的製剤,JAK阻害薬を勧められています。高額なので迷っています。

回答:とても大切な質問です。これは「これらの薬の必要性」と「高額医療費」の2つに分けてお答えします。

生物学的製剤,JAK阻害薬の必要性について:これらの薬はリウマチの基本薬であるメトトレキサート(MTX)よりも強力に関節破壊を抑えてくれます。「今のままの治療では数年以内に関節が変形してしまう」とリウマチ医が判断したときに,これらの薬を勧めています。関節は変形すると戻せません。そして,今までできていたことができなくなると,これも戻りません。お勧めしている患者さんの中には,自覚症状が比較的軽い方もいます。そのような方は,これらの薬を「高いだけの薬」と感じるかもしれません。しかし,前述の通り,関節が変形してしまって失われた機能は戻せません。以上から,リウマチ医にこれらの薬を勧められたら,現在のことだけでなく数年後のことも考えていただきたいと思います。リウマチ医は,たとえ高額な医療費がかかっても,仕事を休んだり辞めたりせずに健康な方と変わらずに働いていただくことをお勧めしています。

高額医療費について:ここでは,身体障害者や指定難病に認定された患者さんを除き,通常の3割負担の方を想定してお答えいたします。薬剤にもよりますが,3割負担の場合,薬の代金だけで3~4万円の自己負担が見込まれます。診察費と検査費,他の薬のことも考えるともっと高くなるでしょう。これについては,高額療養費制度(限度額を超えたら医療費が戻ってくる制度),勤務先の制度(勤務先によっては職員の医療費を援助してくれます),そして確定申告による還付があります。いずれも職場や年収によっても異なりますので,病院の医療相談室などで詳しく聞いていただきたいと思います。