抗アミロイド抗体薬について
本邦の急速な高齢化に伴い認知症患者数は増加の一途をたどっており、認知症患者とその家族を取り巻く環境も急速に変化しています。特にアルツハイマー病治療をめぐる情勢は近年大きく変化し、抗アミロイド抗体薬(レカネマブ・ドナネマブなど)の登場が診療の転換点となりました。これまでの対症療法中心の治療に加え、病態そのものの進行抑制を目的とした治療が可能になったことは、患者さんだけでなく、そのご家族や地域社会にとっても大きな意義を持つと考えられます。
当院では2024年より、これらの薬剤を安全かつ適正に使用できるよう、神経精神科・脳神経内科・脳神経外科が中心となり、早期診断から治療導入、副作用管理まで一貫した認知症医療体制を整備してまいりました。
抗アミロイド抗体薬の有効性は、主に軽度認知障害(MCI)から軽度アルツハイマー型認知症の早期段階で発揮されることが報告されています。このため、早期発見・早期診断がより重要となりました。
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認知症診療について
当院では、院内多職種および周辺医療機関と連携して問診・神経学的所見、MMSE/CDRなどの認知機能検査、SPECT、MRI、アミロイドPETによる画像評価に加え、髄液バイオマーカーを用いた精度の高い病態診断を実施しております。また、抗アミロイド抗体薬の副作用である、アミロイド関連画像異常(ARIA)のリスク評価や家族支援体制など、多角的な視点から安全性を担保しております。治療導入後は、定期的な認知機能評価とフォローアップMRIを実施し、ARIAの早期発見に努めております。症状が出現した場合には迅速に対応し、必要に応じて投与間隔の調整や一時中断を行います。これらの情報は紹介元の先生方にも適宜フィードバックし、全身管理や生活支援については地域の先生方と分担しながら進められる体制にしていきたいと思います。

ご紹介について
ご紹介のポイントとして、![[99KB]](/uploads/contents/pages_0000008935_00/紹介ポイント.jpg)
特に、「近時記憶障害が目立つ」、「年齢に比して認知機能低下の進行が早い」、「若年性認知症の可能性がある」患者さんについては、抗アミロイド抗体薬の適応となる可能性が高く、早期紹介が治療効果向上につながります。
当院の特徴として、神経精神科・脳神経内科・脳神経外科が協働し、地域包括ケアシステムの中核的役割を担いつつ、多職種連携のもとで診療を進めている点が挙げられます。また、脳画像診断や脳の構造的理解、脳血管障害の治療において専門性を有する脳神経外科医が常勤しており、ARIA発症時も適切な対応が可能で、安全に治療を継続できる環境を確保しております。抗アミロイド抗体薬は特殊な薬剤である一方、地域医療の中で適切に活用すれば、患者さんが「自分らしい生活」を少しでも長く保つことが期待されます。
今後も診療体制の改善や新たな治療情報の発信を継続し、“認知症とともに生きる社会”を支える医療を推進していきたいと考えております。認知症でお困りの患者さんがおりましたら、ぜひご紹介ください。